Protoolsに初期装備されている音源として有名な”AIR Music Technolaogy”の全部入りバンドル”AIR Instrument Expansion Pack 3 Complete”(AIEP3)をレビューしようと思います。
かの100円セールで”Xpand!2″を入手している方や、すでにAIR製品いずれかを持っている方はタイミングさえ合えば爆安で手に入る良品なので、ぜひ参考にしてみてください。
(インストゥルメントの数が多いので、文量も多めです)
※”Xpand!2″は近頃無料配布される機会が増えたのでチャンスがあれば手に入れておきましょう。このAIEP3への足がかりになります。
概要
AIRの音源全てとFXプラグイン集、拡張プリセットの一部が含まれています。総容量は約70GB。
通常で購入すると$499(定価)ですが、AIR製品いずれか1つでも持っているとアップグレード版$149(定価)で購入できます。しかし、AudioDeluxe等でのセール時を狙うと$75ほどで購入できてしまいます。
(2017/10/13現在、こちらでセール中$75です)
その時のレートにもよりますが大体9000円弱ですね。
残念ながら日本での販売は無いようで、海外サイトを利用しないといけません。ここは少し覚悟が必要ですが、9000円ほどで70GB相当の音源が手に入るなんて超お得ですね!
同梱内容は以下
●インストゥルメント
- Hybrid3(アナログ・ウェーブテーブルシンセ)
- Loom(加算合成モジュラーシンセ)
- Vacuum Pro(アナログチューブシンセ)
- THE RISER(ライズ系特化シンセ)
- Transfuser(リズムマシン?)※
- Structure(サンプラー)
- Strike(ドラム音源)
- MINI GRAND(ピアノ音源)
- DB-33(オルガン音源)
- Velvet(エレピ音源)
- Xpand!2(マルチティンバー ワークステーション)
※”Transfuser”だけ何故か私のPCではインストールがうまくいかず全貌がよくわかりません。誰か助けてください。
●FXプラグイン
- AIR Creative FX Collection PLUS
●拡張プリセット
- Fresh AIR Expansion(Vacuum Pro用)
- Flux Transitions Expansion(THE RISER用)
- D. Ramirez Expansion(Hybrid 3用)
- Marco Lys Expansion(Hybrid 3用)
- Mark Knight Expansion(Hybrid 3用)
- Rene Amesz Expansion(Hybrid 3用)
- Tocadisco Expansion (Hybrid 3用)
- Analog Trap Expansion(Hybrid 3用)
内容を列挙しただけでも読むのも億劫になるほどの量ですね(笑)
各インストゥルメント評価
※5点満点評価です
- Hybrid3(5点)
- Loom(1点)
- Vacuum Pro(4点)
- THE RISER(2点)
- Transfuser(評価不能)
- Structure(2点)
- Strike(3点)
- MINI GRAND(5点)
- DB-33(3点)
- Velvet(3点)
- Xpand!2(3点)
それぞれ詳しくレビューしていきます。
Hybrid3(5点)
AIR Music Technolaogyの看板的シンセ。正直、AIEP3はこのHybrid3を買うつもりで「他はおまけで付いてくる」と考えもいいくらいオススメのシンセです。
私は正直シンセについては得意分野ではないのですが、これは比較的扱いやすく簡単に自分好みの音を作ることができます。
Omnisphereのような深みや壮大さは無く、Massiveのような太さも無いのですが”AIR”という名のごとく空気感と鋭さのある音が特徴です。単体で聞くといまいちに聞こえる音かも知れませんが、オケに混ざったときの絶妙な抜け感は他では出せない唯一無二なものに感じます。
AIEP3で手に入れた場合、Hybrid3の拡張プリセットが6つも付いてくるので音のバリエーションでも困ることはないでしょう。
私は「何かシンセ系の音が欲しいな」と思ったとき、第一候補としてこのHybrid3を立ち上げることが多いです。かなりの頻度で使っている愛用シンセです。
Loom(1点)
加算合成のモジュラーシンセ。
こちらはHybrid3と比較すると、分厚い音が特徴的でベースなんかに使えるかと思います。
ただ音の作り方がよくわからず、狙った音色を作ることができません。(これは単に私が使いこなせていないだけ)また、このLoom最大の特徴であろう「Morph」機能も設定の仕方を理解するまで2時間ほど費やしました。それくらい難しいです。(一応、説明書きを表示することができ、そこに全て記載されているようなんですが英語表記でまったく読めません)
今はとりあえずプリセットから選んだ音を少しいじってイメージに近い音にする、という使い方がメインになっています。
私の場合、もしシンベを使うならやはり図太さが欲しいのでこのLoomでは少々役不足。上物に使うとなればそれこそHybrid3の出番になので、何かの気まぐれがない限りまず立ち上げることはありません。
プリセットの音はなかなか良い出来なんですがね…。
UIはカッコいいので何となくテンションだけ上がります(笑)
(執筆時点で新しく”Loom2″が発表されました)
Vacuum Pro(4点)
“Vacuum”というモノフォニックタイプがProtoolsに初期装備されていますが、“Pro”になったことでポリフォニックで鳴らすことが出来るようになりました。またベロシティにも対応しました。(Proじゃないほうはベロシティが利かないのです)
さらに”パート機能”が追加され2つの音色を同時に鳴らすことができ、音作りの幅がグッと広がりました。
出音に関しては、真空管搭載のアナログシンセを再現しているため非常に”暖かみ”のある音が鳴ります。Hybrid3が”寒色系”の音なら、こちらは”暖色系”の音です。
私はProtoolsユーザーで、初期装備のVacuumはよく使ってたこともあり(というかこれでシンセの基礎的な使い方を覚えた)Pro版も何ら迷うことなく使うことができました。
「Vacuumの暖かい音でパッド音色作りたいのに、モノじゃ和音鳴らせねぇじゃん」とずっと思っていたので、私にとってこのVacuum Proは大きな収穫だったりします。コーラスやディレイなどのエフェクトが使えるようになったのもGoodです。(まぁ、今どきのシンセなら普通に使えるものなんですがね…)
THE RISER(2点)
EDMやダブステップなんかでよく聞く「ヴゥィィイイイン↑」みたいな(伝わってるかな?)ライズ系の音に特化したシンセです。逆にライズだけじゃなくダウン系の音にすることもできます。
“Pumper”エフェクトが装備されているので、ワブル系のギミックも簡単に作り出すこともできます。普通ならピッチやフィルターなどをモジュレーションで動かさないといけませんが、そういった手間無く簡単にライズやワブル系の音を扱えるようになります。
入力するノートの高低で上昇、下降のスピード(長さ)を変えることができるので、曲のノリに合わせての微調整も簡単にできます。
ただ私はこの手の音をあまり使いませんし、必要になる場面も少ないので2点です。EDMをよく作る人には良い音源なのかも知れませんね。
Transfuser(評価不能)
インストールが上手くいきません。助けてください。(使えなくても特に困ってもいませんが…)
Structure(2点)
サンプラーです。free版がProtoolsに初期装備されていますが、こちらはライブラリの数が増えたり制限がかかっていた機能を全て使えるようになります。
音のクオリティはKontaktのファクトリーライブラリに入ってるものと大差ないかと思います。”サンプルスタート”がすぐに調整できる位置があるのは結構便利です。
これを使ってもいいけどKontaktのほうが使い慣れてるし、というとても微妙な立ち位置。
Strike(3点)
リアル指向ではないけれど、これはこれで使えそうな音のするドラム音源。
サステインや余韻よりアタック音が強調されているため若干嘘っぽい音というか薄っぺらい印象があります。しかし、モバイルゲームのBGMなんかだとちょうど良いスケール感で収まるのではないでしょうか。BFDとかだとちょっと音がリアル過ぎるなというときに使えます。
ある範囲のノートにはそれぞれに様々なリズムパターンがアサインされており、キーを入力するだけでカッコいいパターンを演奏してくれます。それらを組み合わせるだけで、1曲分のドラムトラックも簡単に作ることができるでしょう。
キーマップを自分で組み変えられたらなお良かったのですが…。
MINI GRAND(5点)
Protoolsの初期装備でもあるピアノ音源。
非常にシンプルで必要最低限の項目しかありませんが、無駄な邪念が入らないので作曲時には積極的に使っています。はじめのロードに少々時間がかかりますが、他の大容量ピアノ音源と比較すれば速いほうです。
音に関しては低~中音域がとにかく素朴な感じで、高音域だけは独特の煌びやかさと美しさがあります。ピアノソロ曲なんかで使うと物足りなさが顕著に出るのですが、バンド系のオケ中とかだと良い感じに馴染みます。Hybrid3と同じで、単体より混ざったときに真価を発揮する音源ですね。(というよりAIRの音源はこのタイプが多いです)
ピアノ奏者にとっては物足りない部分のほうが多いと思いますが、スケッチ段階で使うような作曲ツールとしてとらえるとかなり使える音源だと思います。曲によっては差し替えることなく、完パケまで使うことも珍しくないです。
使用頻度の高い音源の1つ。
DB-33(3点)
これもProtools初期装備のトーンホイール・オルガン音源。
正直オルガンについては比較できるほどの音源を持っていないし、大して詳しくもないので何とも言えなかったりします。ただこのDB-33で特に困ったことはないので、悪い音源ではないと思っています。(単にこだわりがないだけかも…)
オルガン欲しいなと思ったときはとりあえずこれ使ってます(笑)
Velvet(3点)
エレピ音源。
エレピ自体使用頻度はかなり低く、滅多に使うことはないのですがエレピとなったこれを使うことが多いと思います。出音の良し悪しより、音作りのしやすさが気に入っています。
プリセットも使える音が多いです。
Xpand!2(3点)
Protoolsユーザーがまず最初にお世話になるであろうマルチ音源。巷を騒がせた100円セールでとりあえず手に入れた方も多いのではないでしょうか?
アコースティック系の音は正直あまり使えた音ではありませんが、シンセ系の音に関しては即戦力の音が多数揃っています。下手に他のソフトシンセをいじるより、このXpand!2のパッチからそれっぽい名前のものを選んだほうが良い結果になることも多いです。
4つの音をレイヤーすることも出来るので分厚い音も簡単に作れます。
何気にアルペジエーターのキレのよさが気に入っています。
FXプラグイン評価
AIR Creative FX Collection PLUS(1点)
Protoolsに初期装備されているAIR製FXプラグイン集”+α”です。
Protoolsユーザーにとっては”+α”の部分しか恩恵がありません。といってもそれなりの数のエフェクトが追加されているのですが、その”+α”の中で私が心引かれるものはあまりありませんでした。(一応、上の画像ではProtoolsに初期装備されていない”+α”のものを集めてみました)
強いて言うなら”AIR Parametric EQ”と”AIR Sturation Filter”をたまに使うことがあるくらいです。”AIR Pumper”というエフェクトも使えると思うのですが、同じような効果を作れるWavesの「Onenob Pamper」をすでに持っており、こちらのほうが圧倒的に操作が簡単なので出番がないです(笑)
Protoolsに初期装備されているものに関しては、”AIR Distortion”や”AIR KillEQ””AIR FilterGate”など総合すると結構使っていますね。なので、Protools以外のDAWを使っている方にはかなりオススメだと思います。何より”Protoolsごっこ”ができます(笑)
まとめ
拡張プリセット集に関しては特性上評価を割愛します。
まとめは以下のとおり
- アップグレードとセール時を組み合わせて狙うと安い
- Hybrid3が特にオススメ
- EDM系をよく作る人にオススメ
- オケに混ざったときに映える音が多い
- 音源だけじゃなく大量のFXプラグインも手に入る
- どのDAWでもProtoolsごっこができる
はっきり言って、アップグレード価格1万円以下のボリュームではないです。(セール価格での話になりますが…)AIR製品はどれも動作が軽快で扱いやすいものばかりです。単体での出音でエースを張れるようなものは無いかもしれませんが、名脇役的な音源として活躍してくれるでしょう。
AIRのセールはどこかしらで頻繁にしているので、もしセールが終わっていたなら気長に待ちましょう。
AIR Music Technology サイト→http://www.airmusictech.com/