突然ですが、DTMで音楽制作をされている皆さん。ドラム音源は何を使っていますでしょうか?
「AddictiveDrums2」「BFD3」など名前を挙げればきりがないくらいのドラム音源がありますが、DAWに初期から入っているマルチ音源のドラム音色を使っている方も多いでしょう。
このような専用音源ではなくマルチ音源のドラムを使ってる方の悩みといったら、やはり「音が薄っぺらい」。はっきり言うと「音がしょぼい」ということではないでしょうか?
とくにロック感のある曲を作るうえでは迫力あるドラムサウンドは必要不可欠ですが、マルチ音源だとなかなかこれが再現できないんですよね・・・。
そこでマルチ音源でドラムトラック制作を頑張っている方に向けて、少しでもかっこいいドラムサウンドを作るテクニックをお教えしたいと思います!
もちろん既にドラム専用音源を持っている方も応用できる技なのでお試しください!
ドラムの迫力はオーバーヘッドマイクが要!
DTMで生楽器系を再現する際は、その楽器そのものの特性やレコーディング方法を知っておくことが重要です。なので、まずはドラムのレコーディングについて少し触れていきましょう。
ドラムのレコーディング風景やライブ中のドラムセットを見ると、たくさんのマイクが立てられていることに気付くかと思います。基本的にこれらはドラムセットの各ピースごとに立てられています。(バスドラムに1本、スネアに1本というふうに)
そんな中、ドラムセットの上のほうから下に狙っているマイクがあることを確認できますでしょうか?(だいたい2本立っていることが多い)これは「オーバーヘッドマイク」といってドラムセット全体の音と空気感を拾うために立てられるマイクです。
そして、このオーバーヘッドマイクで拾う音こそがドラムに迫力を出すための重要な要素となっているのです。
下の動画はドラムレコーディングのマイキングについて解説しているものです。
4:30~よりオーバーヘッドの解説があり、その音を聴くことができます。
マルチ音源のドラムには、このオーバーヘッドの音が無いために薄くてしょぼい音になってしまうのです。
たとえ生ドラムをレコーディングしたとしても、このオーバーヘッドマイクをミュートするとかなりさびしいサウンドになります。
リバーブを使って擬似オーバーヘッドを作る
マルチ音源のドラムのようにオーバーヘッドの音が無いのなら、それを擬似的に再現してしまえばいいのです!ここからその方法について説明していきます。
まずはProtoolsに初期装備されているマルチ音源「Xpand!2」を使って簡単にドラムを打ち込んでみたので、その音を聞いてみましょう。
薄っぺら過ぎて全く迫力がないですね(笑)
ちなみに編集画面はこのような感じになっています。マスターにEQをインサートしていますがレベル調整のためだけに使っているので実質何もしていません。
それではここに擬似オーバーヘッドを付け加えていきましょう!
オーバーヘッドマイクは空気感を録音する役割もあるので、タイトルにもある通りリバーブを使用します。
まず新規でステレオのAUXトラックを作成します。
そして作成したAUXにリバーブを立ち上げ、各トラックの音をセンドを使用してAUXに送ります。センド量はお好みで各ピースごとに調整しましょう。(今回は全て0dbで統一しています)
これで擬似オーバーヘッドの基礎が出来上がりました。あとはリバーブの設定でオーバーヘッドの鳴りを調整するだけです。上記の画像のリバーブ画面はすでに調整済みのものになります。
この状態での音を確認してみましょう!ちなみにここで使用しているリバーブはAvidのReverbOneです。
一気に雰囲気のあるドラムになりましたね!
リバーブの設定についてですが、注意する点は主に3つです。
- MIXレベルではドライの音を上げ過ぎない(センドを使っているため)
- リバーブタイムは長くしすぎない
- プリディレイで距離感を調整する
それぞれ上記のリバーブ画面も見ながら確認してみてください。
まずMIXレベルですが、AUXを使っているので基本的にウェットをMAXでドライをMINします。しかし実際のオーバーヘッドの音はけっこう音が近いので、ドライも多少上げていたほうが良い結果になることが多いかもしれません。しかし、上げすぎは禁物です。
リバーブタイムも長くし過ぎると残響ばかりが目立って変な響きになるので、長くし過ぎずにちょうど良いポイントを探しましょう。
そしてプリディレイでどのくらいの距離にマイクを立てているのか、というところを調整します。一番影響力のあるパラメーターだと個人的に思っているのですが、曲の雰囲気によってベストなポイントはさまざまです。リバーブタイムと同様ちょうど良いポイントを模索しましょう。
擬似オーバーヘッドにEQをかけてみる
上記のセッティングだけでもかなり見違えるのですが、この擬似オーバーヘッドにEQをかけてさらに自然な感じに作りこんでみたいと思います。このままだといかにも「リバーブかけましたぜ!」感があるので、それを少しでも解消するのが狙いです。
今回EQは下の画像のように設定しました。
まずリバーブにEQをかける際の常套テクである高音域を削るという処理をしています。これによりリバーブ成分を馴染みやすくしています。
また低音域の音がこもる感じを解消するため、低音域も大きく削っています。キックに対してリバーブはあまり必要ないですしね。
中音域のブーストはいわゆる「部屋鳴り」のする部分を上げてやり、ドラムトラック全体にほんの少し厚みを加えるてやるのが狙いです。
それでは音を聴いてみましょう。
どうでしょうか?派手さは無くなりましたが、馴染みがよくなったと思いませんか?
ただEQした私自身がこんなことを言うのもなんですが、本物のオーバーヘッドマイクの音からは少し遠ざかってしまったかもしれませんね(笑)どちらかというと、オーバーヘッドマイクよりさらに離れたところに立てる「アンビエントマイク」のほうに音質は近いかもしれません。
このEQはあくまで私個人の好みで設定しているので、皆さんも自分なりのEQをかけてみてお好みのドラムサウンドになるよう調整してみてください。
あと最後に、個人的にはもっとドライな音のほうが良いなと思ったので擬似オーバーヘッドのVOLを-6db下げてみました。
ドラム単体ならこっちのほうが良いかもですね。実際の楽曲としてベースやギターなどが乗っかってくると埋もれてしまうかも知れませんから、適宜調整といったところでしょうか。
まとめ
多少、付け焼き刃じみたテクニックですが、マルチ音源のドラムを使っている人にとってはかなりドラムトラックの仕上がりに差が出るテクニックだと思います。
これでもドラムトラック制作に限界を感じるようになったのなら、本当にドラム専用音源を必要としている時期に入っていると思うので、素直に導入を検討しましょう。
今回は極力わかりやすいようセンド量などを一律にしていますが、各ピースのセンド量を変えたりキックだけはAUXに送らないといった選択肢もありです。また、もう1つAUXを増やしてスネアだけは別のリバーブで肉付けしてみたりといったことも、アイデア次第でいくらでも応用ができます。
すでにドラム専用音源を持っている人でも、音源に入っているオーバーヘッドやアンビエントマイクと併用してこのテクニックを応用してみると、また新しいドラムのサウンドメイクができるようになるかも知れません。
ぜひお試しください!