“Sonarworks Reference3 HEADPHONE CALIBRATION”を購入しましたので、そのレビューしてみたいと思います。
モニターは音楽制作の要と言える部分ですが、日本の住宅事情を考えるとスピーカーではなくヘッドフォンをメインにモニターしている人が多いのではないかと思います。そういった方にとってはかなり気になる製品なのではないでしょうか?
実際に使用してみての評価、良い点、悪い点など私の視点で評価していきます。
製品概要
簡潔に説明すると「あなたのヘッドフォンのクセを修正して、超フラットなヘッドフォンにしてしまう」のがこの製品です。
厳密には、Sonarworksが独自に世界中の有名ヘッドフォンの特性を一つ一つ測定し、その音響データをもとにして皆さんが使用するヘッドフォンに逆EQをかけてフラットな音質に補正しています。左右の位相ずれなども補正してくれてるようなので、ただの逆EQというわけではないようですが…。
下記の画像を見てもらうとキャリブレーション前後でどれくらい補正されているか、一目瞭然ですね。(画像ではMDR-CD900STをキャリブレートしてます)
●元のこのカーブを…
↓
●このように処理して…
↓
●こうする!
上画像最初のMDR-CD900STのカーブを見てもわかるように、いくら「モニターヘッドフォン」と銘打たれたものでも完全にフラットなヘッドフォンというのは皆無です。再生する楽曲のジャンルによって印象が大きく変わるものもあるし、高音域が得意なヘッドフォンもあれば、低音が得意なヘッドフォンもあります。少なからず世のヘッドフォンは全て音質が”偏っている”ということです。これでは自分の所持しているヘッドフォンのクセをいちいち考慮しながらEQを操作しなければいけません。
こういった問題を解決し、再生される音を全面的に信用できるようにするのが”Sonarworks Reference3″です。
ちなみに今回レビューするのはヘッドフォン版ですが、スピーカーを補正する“SPEAKER CALIBRATION”もあります。
使用方法
“HEADPHONE CALIBRATION”はプラグインとして動作します。なので、DAW上のマスタートラック最終段インサートに挿すことでDAWの音をキャリブレーションすることができます。
ちなみに同社の”Systemwide”を使用すると、PCのOSシステムに常駐するようになり、DAWでプラグインとして動作させずともPCから出力される音すべてをキャリブレーションすることができるようになります。(Windowsの場合、SystemwideでDAWの出力をキャリブレートすることはできません。WindowsでDAWの音をキャリブレートする場合は普通にプラグインを使用しましょう。Macなら可能なようですが、あいにくMacユーザーではないのでわかりません)
良い点・悪い点
良い点
- 難しい操作は一切無く簡単明快
- フラットにするだけでなく、他のリファレンスEQカーブを選択することもできる
- 有名なモニタースピーカー、ヘッドフォンをシミュレートすることができる
- 出先でも同じ音でモニターできるようになる
- とにかく信用できる音になる
悪い点
- バウンス時にOFFにするのが面倒くさい
- 対応しているヘッドフォンが限られている
詳しくレビュー
難しい操作は一切無く簡単明快○
文字どおり難しい操作は一切ありません。
画面を立ち上げたら右上にある”プロファイル”から自分が使用しているヘッドフォンを選ぶだけでキャリブレーションされます。
フラットにするだけでなく、他のリファレンスEQカーブを選択することもできる○
ヘッドフォンをフラットにするのは当たり前ですが、他にもいくつかリファレンスとなるEQカーブを選択することができるし、ある程度自分でカスタマイズすることもできる。
これがなかなかに秀逸で、非常に作業しやすい”良い音”でモニターできるようになります。(私はミックス時、”Home All speakers(Avereaged Simulation)”という設定を選択してモニターしています)
はっきり言って完全にフラットな音というのは聴いていて気持ちのいい音ではないんですよね。しかし、用意されている他のリファレンスEQカーブを選択すると、しっかり音楽が聴ける音でかつ全体を見渡せる音になります。先にも言ったとおり数種類のEQカーブが用意されているので、自分の好みに合わせて設定すると良いでしょう。
有名なモニタースピーカー、ヘッドフォンをシミュレートすることができる○
ヘッドフォンをキャリブレートするだけでなく、有名なスピーカーやヘッドフォンをシミュレートすることもできます。
スピーカーでは、かの”YAMAHA NS10M(テンモニ)”ヘッドフォンでは”AKG K712″などをシミュレートすることができます。
さすがに密閉型のヘッドフォンを使用して開放型のK712を完全シミュレートすることはできませんが、確かにそれっぽい音になります。密閉型のものをシミュレートする場合は密閉型のヘッドフォン、開放型のものをシミュレートする場合は開放型のヘッドフォンを使うようにするとよりそれっぽくなりますよ。スピーカーシミュレートもわりとスピーカーで聴いているような感覚にしてくれます。
いまはシミュレート数が少ないですが、もっと数が増えると実機を購入する際の参考にすることができるようになるかもしれません。
出先でも同じ音でモニターできるようになる○
持ち出し用のノートPCや出先のPCにもReference3をインストールしておけば、自宅とほぼ同じ音でモニターすることが可能になります。
特筆すべき点は、自宅で愛用しているヘッドフォンを持ち出さなくても対応しているヘッドフォンであれば何でもいいということです。自宅で使っているヘッドフォンが高額なものだったりすると外に持ち出すなんてもってのほかですよね。なのでReference3に対応している別のヘッドフォンを外出用として用意しておけば、どこでもReference3の恩恵を受けられます。
場所や再生環境によって音が変わると、出先で誰かに音源をチェックしてもらうときに自分が狙ってた音を正しく聴いてもらえなかったり、逆に出先で作業した音源を自宅に持ち帰って確認すると違和感が出たりと、いろいろ不都合なことが多いのです。
こういったデメリットを減らし、作業の効率アップに繋げることができます。
とにかく信用できる音になる○
いろいろ書いてきましたが、最終的にはこれにつきます。
再生される音を疑わなくてすむので、あとは自分の耳ですべてを判断するだけです。
バウンス時にOFFするのが面倒くさい×
DAWのインサートに挿すわけなので、バウンス時にOFFしないとキャリブレートされたままの音でバウンスされてしまいます。
バウンス時に勝手にOFFってくれると助かるんですが…。
対応しているヘッドフォンが限られている×
“Reference3 HEADPHONE CALIBRATION”の最大の弱点。Sonarworksが測定、プロファイリングしたヘッドフォンでしか使用できません。
とはいえ、定番どころのモニターヘッドフォンはすでに対応しているし対応機種は随時追加されています。日本では圧倒的定番のMDR-900STも日本で販売開始当初は対応していませんでしたが、ものの数ヶ月で対応するようになりましたね。
現在対応しているヘッドフォンはこちらで確認できます。
総評
モニター環境で悩んでいてかつ対応ヘッドフォンを所持している方は買いだと思います。また出先でもモニター環境を統一したいという方にもオススメです。
またシミュレート機能もあるので、これ1つで複数のモニター環境を手に入れることができるという利点もあります。これだけでもかなりの価値があると思いますね。
そして、私がもっともおすすめしたいのはDTM初心者でこれから機材を揃えようという方です。この”Reference3 HEADPHONE CALIBRATION”と対応しているヘッドフォンの中で比較的手に入れやすいものを購入すると、最速でかつ予算もそこそこで理想的なモニター環境を手に入れることができてしまいます。正直、これはやばいことです。
私個人の体感として、導入後はモニターにかなりの信頼をおくことができるようになったので悩む回数や時間が減り、より作業が速くなりました。同時に作品のクオリティも上がったように思います。何より自信をもって自分のミックスにOKを出せるようになったのは大きいです。
気になる方は試用期間もあるのでぜひ一度試してみるといいと思います。
Sonarworks本家サイト:https://www.sonarworks.com/
日本代理店サイト:http://www.minet.jp/brand/sonarworks/top/