第11回目です。今回はようやくのミックス作業です。
正直、ミックスは得意ではないので、果たして参考になるかどうか微妙なところですが構わずにさらけ出していくスタイルでいきます。
このミックスを終えれば投稿まで目前です。
これまでの記事はこちらから↓
進捗状況
作曲下準備作曲編曲レコーディング(Gtのみ)作詞ボカロ調声- ミックス←(いまここ)
- マスタリング
- 投稿用動画制作
- ニコ動へ投稿
前回までの成果がこちらになります。
これをミックスして、音源としてさらに磨きをかけていきます。
あまりにも下手なミックスをしてしまうとと、何の処理もしていないこの状態のほうが良いなんてことも起こりうるので、そうはならないよう頑張ってミックスしていきたいと思います。
ミックス下準備
作編曲、作詞段階と同じように、ミックスでも本格的に始める前に下準備を行います。
前回作成したボカロの歌唱を書き出し、DAWに流し込んだりと結構やることがあったりします。
実際のところ編曲段階でしっかり調整していれば、する必要の無い内容もあったりするんですが、ずっとサボっていたのでここでまとめて調整していきます。
ボカロコーラストラックをダブルに
まずは前回作成したボカロの歌唱データをDAWに流し込み、コーラスをダブル化します。
コーラスはステレオして左右に定位させるわけです。
ダブルにするにあたって、私の場合はいつも「RevoicePro」というソフトを使います。
ボーカルのピッチ補正や、自動でダブルの作成やタイミング修正もできる非常に便利なソフトです。
ここではDoublerという機能を使ってダブルを自動生成します。
そして、ダブルにしたコーラスがこちら。
L側が原音でR側がRevoiceを使って生成したものです。
ちなみにですが、トラックを普通に複製して左右にPANを振っただけではこうなりません。
RevoiceProを使わない場合は、VOCALOID Editer上でコーラストラックを複製し、ほんの少しピッチを操作してデチューンさせたり、jobプラグインの「タイミングランダマイズ」等を使ったりする方法もあります。
が、RevoiceProを使うほうが圧倒的に楽です。
音量バランスの見直し
先ほどダブルにしたコーラスも含め、全トラックの音量バランスを見直します。これまではかなり雑にバランスをとっていたので、ここで少しシビアに見直します。
実はこれまでの作編曲段階ではマスタートラックで普通にピークランプが付いていたので、ここでちゃんと収まるようにレベル管理していきます。(記事に貼る音源書き出し時はリミッターを挿してました)
とりあえず何でも良いので「VUメーター」をマスタートラックに挿します。
いつだったかWavesが無料配布していたVUメーターです。
耳に自信のある方はこんなの使わなくても問題ないでしょうが、正直言って私の耳は決して良くはないのでこういったメーターを頼りにしないと収拾がつかなくなります。
私の場合、VUメーターのキャリブレーションは、0VU=-18dbまたは0VU=-20dbに設定することが多いです。今回は0VU=-20dbにしています。
そして、このVUメーターの動きを見ながらメインボーカル、ベース、キックの3つを鳴らした状態で、大体0VUくらいに針が振れるよう各音量バランスを整えます。
実際、このように調整してみるとかなり音量を下げることになるのですが、ダイナミクスを意識したミックスをしようとするなら、これくらいピークまでに余裕をもっておいたほうが何かと都合が良いです。
また、ここで重要になるのはメーターの動きが主にキックに連動して振れるようにすることです。
そうすると、キックやベースが小さすぎたりボーカルが大きすぎたりなんてミスはおのずと減ってきます。
実際には、メインボーカル、ベース、キック3点を下のような音量バランスにしました。
残りのトラックはこれを基準にして音量を決めていきます。
歌ものなので基本的に各トラック、ボーカルより小さめか同等になるような音量を心がけると失敗しないと思います。
そして、全トラック再調整したものがこちらです。
当たり前ですが、ずいぶん音量が小さくなりました。これまではマスターでピークが点いていたものをリミッティングして書き出してたのですから、そりゃそうです。
インストゥルメントはすべてオーディオ化
この段階で音源として鳴らしていたBFDやTrilian等をすべてオーディオとして書き出してしまいます。
こうすることでPCの負荷を減らすことができます。
が、どちらかいうと、もうアレンジには戻れなくすることでミックスに集中することが最たる目的だったりします。逆に、オーディオ化したからこそできるようになることもあるので、潔くアレンジには後戻りできないようにします。
問題点の洗い出し
しっかりと音量バランスを整えると、現状における問題点とミックスでどのように処理したいかが明確になってきます。それらをあらかじめ書き出しておくと、自然と無駄な処理が減ってくると思います。
ざっと書き出すとこんな感じです。
- メインボーカルが少し埋もれ気味
- コーラスをもう少し引っ込めたい
- キックの音がダサい
- スネアにもっと伸びが欲しい
- ギターが少々暴れ気味(特にリード)
- ギターが暴れ気味ゆえにピアノが埋もれている
- ベースの音粒をもっと揃えたい
要はこれらをすべて解消できれば、最低限のミックスが完了するわけです。+αで曲をさらに磨き上げるような処理ができれば完璧なのでしょうが、それが難しいんですよね…。
ボカロトラック下ごしらえ
とりあず上の問題点の中で特に問題なのが「メインボーカルが少し埋もれ気味」という点です。
歌もので歌が聞こえないというのは本末転倒もいいところなので、ここはあらかじめ手を打っておきます。
まず発音が弱いところや聞き取りにくい部分を「クリップゲイン」というところからオートメーションを書いて適宜持ち上げます。
これで多少マシになりましたが根本的に歌声そのものが細すぎるので、もっと音像を大きくするためにエキサイターを使って倍音を足します。
使用したのはWavesの「Vitamin」とNIのKOMPLETE Ultimeteに付いてくる「Enhanced EQ」です。
※4小節ごとに「原音→Vitamin→Enhanced EQ」と変化させてます
まずVitaminで中~高域をエンハンスしてみたのですが「もう一押し欲しいな」と思い、試しにEnhanced EQを使ってみたら良い感じの太さが出てきたのでそのまま採用しました。
単体だといまいち効果が分かり難いかもしれませんが、オケに入るとこれが結構変わるものなのです。
全トラックにbx_consol SSL 4000Eをインサート
下準備の最後として、全トラックにPlugin Allianceの「bx_consol SSL 4000E」をインサートします。
このプラグインはSSLの4000Eというコンソールをシミュレートしたもので、これを全トラックに挿すことでSSLごっこをするわけです(笑)
というのは半分冗談で、真意としては全トラックに「エキスパンダー」は挿したいのです。
これはとあるミックス関連書籍で書いたあったことをそのまま真似てるだけなのですが、要約すると「全トラックに緩やかにかかるエキスパンダーを掛けておくとノイズ対策にもなるし、なんかキレが出てきて生き生きとした感じになるよ」ということらしいです。
私自身試してみて、結構効果を実感しているのでよく使うテクニックなのですが、たかがエキスパンダーで全トラックのインサートスロート1つを占有するのはいかがなものかと思い、行き着いたのがこのbx_consol SSL 4000Eなのです。
これはデフォルトで緩やかなエキスパンダーがあらかじめかかるように設定されているうえ、コンソールシミュレートなのでSSLの味付けも付加できるし、その後のEQ、コンプの処理もそのままできてしまう等、私としては一石三鳥なプラグインなので使わない手がないのです。
まぁ、SSLごっこをしてることには変わりありませんが(笑)
以上で下準備は終わりなので、本格的にミックス作業をしていきます。
センター定位トラック処理
ここから本格的にEQやコンプを使って処理していくのですが、私の場合はまずキック、ベース、メインボーカル、スネアの順に処理していくことが多いです。
これらセンターに定位するトラックは曲の骨格にあたるので、ここを始めに処理して固めておかないと他トラックの処理するときに悩むことになります。
ミックス時には主にサビ部分を聴きます。そして、サビで鳴っているトラックを優先的に処理します。
大体の場合、一度にたくさんの音が重なるのは一番盛り上がるサビです。ここで上手くバランスが取れていれば、他のAメロやBメロで破綻することはまずないでしょう。なので、まずはサビを聴きながらミックスをしていくのです。
もし他のセクションでイメージから外れたトラックが出てきたなら、そこだけオートメーションを書くなり、トラックを分割して違う処理をするなどして対処すれば良いわけです。
キック
まずはキックから。
キックは面倒なことに4つのトラックから成り立っているので、始めにこれらすべてをバスでまとめてしまいます。
そして、各トラック単体で聴きながら問題点を処理していきます。
●Kick_In
キックの音はこのトラックを主軸にして作っていこうと思います。
まず原音がキックらしい低音感と厚みが皆無なので、EQでそれらが出るように処理。そして、ほんの少し均すようなイメージで後段にコンプを掛けました。
このbx_consol SSL 4000E。実はコンプとEQ部分を適宜「SSL 4000G」のものに切り替えることができます。ここではコンプをGに切り替えています。
そして、30Hz以下の低音はこのトラックにおいては必要ないかなと思い、ハイパスフィルターでカットしました。
※画像赤枠内が意図的に設定した箇所になります
※原音→EQ→コンプ→ハイパスフィルター
EQ処理以外はかなり些細な違いしかないので分かりずらいかもしれませんが、ミックスってこういうのの積み重ねなんですよね。
●Kick_Out
このトラック単体だとわからないですが、先のKick_Inと混ざると低音域が消えます。これは位相の問題なので、Kick_Out側の位相を反転することでこれに対処しました。
低音パートではこういった位相問題が出てきやすいので、試しに一度は位相反転して聴いてみることをおすすめします。
※位相反転なし→位相反転
単体の音としては中音域に「ポンポン」と間抜けな音が鳴る帯域があるので、EQで中音域2バンド使ってそこを大きく削りました。そして、少し低音を補うために100Hzあたりを軽くブースト。
またこのトラックで鳴っている高音域の「ベチッ」という音はなかなか好きなので、抜けをよくすることを踏まえて高音域も強調しています。
そして、後段のコンプはbx_consol SSL 4000Eのものを使わず、Sofutubeの「Summit Audio TLA-100A」をインサートして使っています。アタック、リリースともに早めにしてアタックを潰し、Kick_Inの音よりも少し引っ込んで聴こえてくるようなイメージで調整しました。
※原音→EQ→Summit Audio TLA-100A
●Kick_Offaxis
このトラックはキックのさらなる低音補強として使用しました。
上2つのトラックではEQ→コンプの順番で信号が流れていますが、このトラックではコンプ→EQの順番に流れるようにしています。
このコンプも均すようなイメージで掛けています。
また、低音補強として使うので必要のない高音域をフィルターでバッサリ切りました。
そして最後に「ボンボン」とこれまた間抜けな音がする400HzのあたりをEQで削りました。
※原音→コンプ→ローパスフィルター→EQ
この3トラックの処理で結構好みの感じになってきたので、4つ目のKick_Distantというトラックは使用しないことにしてオフにました。
そして、以上3トラックを下の画像のような音量バランスで整えました。
●Kick_Bus
次はまとめたキックバスの処理に入ります。
まず低音の質感がまだ詰め切れていないと思ったので、Wavesの「R Bass」を使ってさらに低音に一味加えました。
すると、ここにきてサステインの長さが気になりはじめました。もっとタイトな音のほうが好みなので、エキスパンダーを駆使してサステインが短くなるよう調整しました。
これでかなり仕上がってきたかなと思うのですが、音量にまだムラがある感じがしました。音量を均すという点ではコンプが常套句なのですが、これ以上コンプ感のある音にはしたくなかったので「Distorsion」を使ってダイナミクスを縮める戦法を使ってみました。
歪ませるのが目的ではないので、MIXレベルを上手く調整して気持ち程度に掛かるようにしています。
※原音→RBass→エキスパンダー→ディストーション
キックの処理は以上です。
ベース
続いてはベースです。
ベースはTrilianから直接出音していたDIの音と、Amplitubeを通した音の2つがあります。これら2つもキックの時と同じように、バスでまとめておきます。
●Bass_DI
まずはDIトラックから処理します。
Trilianがというか、Spectrasonicsの音源は音がハイファイ過ぎて馴染まない、なんてことが多々あります。ハイからローまでとにかく情報量が多いのです。なので、まずベースではあまり必要ないであろう高域、6kHzあたりから上をローパスフィルターで切り落とします。
良い具合に重心が下がったので、次はコンプで音粒を揃えます。弦を弾く時の「カリッ」としたアタック音が目立ってくるような感じで、結構深めにコンプを掛けています。
そして、もう少し歪みっぽさが欲しいと思ったのでEQを使って倍音部分を持ち上げるような感じに処理しました。またEQタイプをGに切り替えたほうが良い感じに歪みっぽくなったので、そちらを使っています。
※原音→ローパス→コンプ→EQ
●Bass_amp
このトラックで欲しいのは中音域の歪みっぽい部分だけだと判断したので、フィルターでハイとロー両方を軽く削りました。
そして、もう少しアンプらしい厚みのあるベースにしたかったので、100HzあたりをEQでブーストしました。
また、このトラックはアンプを通してそれなりに歪ませているのでに音が潰れています。なのでコンプは必要ないと判断しました。
※原音→フィルター→EQ
●Bass_Bus
続いてバスに移ります。
上の処理でベース単体の音はかなり仕上がっている感じがするのですが、キックと合わせて聴いたときにイマイチ馴染みが良くありませんでした。ベースがキックよりも前に出ている感じで浮いているのです。(個人的にキックが前に出ているほうが好みだったりします)
とりあえずベース側のフェーダーを軽く下げて音量を調整してみましたが、それでもいい感じにはならなかったので、音量の調整だけでは不充分ということなのでしょう。
なので、キックと上手く馴染ませると同時にもう少し音粒を均す目的でSofutubeの「Tube-Tech CL1B mk2」をインサートしました。
このコンプはアタックタイムとリリースタイム両方を自由に操作できて汎用性が高いうえ、音質も図太い感じで潰してくれるのでお気に入りのコンプの一つです。アタックタイムはベースのアタック音引っ掛かるくらいの速さを意識し、リリースはキックと合わせて聴きながら馴染みが良くなる場所を探りました。
これでキックとの前後関係は多少良くなった感じがしますが、まだ詰め切れていない感じがします。というか、CL1Bのせいで倍音がかなり付加されてしまい帯域的に邪魔な部分が増えたような感じがします。これによりメインボーカルとも合わせて聴いたときに邪魔になっているような感じがしました。
しかし、現状のこの音は結構気に入っているので、コンプはそのまま採用し邪魔な帯域部分だけ解消しようとProtools標準のEQを使って調整してみました。バンドパスフィルターで450Hzあたりの混雑しやすい中域をカットし、ボーカルの抜けを邪魔していそうな3kHzあたり、さらに重心を下げる目的で10kHz以上をシェルビングでカットしました。
ボーカルの邪魔になるということは、ギターなど他の楽器の邪魔にもなりかねないので、ぶつかりそうな帯域はあらかじめここでカットする意図もあります。
ベーシストからは反感をもらいそうですが、個人的にベースは影で低音を支えていて欲しいので最終的には目立たないような処理をしがちなのです。
※原音→Tube-Tech CL1B mk2→EQ
(ミスってキックも一緒に入ってしまいました)
メインボーカル
低音パートがある程度出来上がったので、次はその上に乗っかるボーカルに手をつけます。
下ごしらえの時に音像を大きく、厚くするような処理をしましたが、こうして低音を処理した後で聴くと、重心はもう少し高くしたほうが良いかなと思いました。
なので、まずはハイパスフィルター60Hz以下あたりをカット。
そして、少々耳障りに感じた4kHzをEQでカット。すると、さすがに少し抜けが悪くなったので8kHz以上をシェルビングでブーストし、ボーカルの芯となる帯域である600Hzあたりもブーストしました。
これで耳障りな感じを解消しつつ、抜けを維持できたかと思います。
この段階でキック、ベースと合わせて聴いてみるとあまりにもボーカルが前に出過ぎている感じがしました。音量的には妥当なバランスだと思うのですが、どうも浮きすぎている感じがするのでここはコンプを使います。
使用したのはSoftubeの「FET Compressor」。いわゆる76系コンプです。音以上にUIが好きなコンプです。
アタック、リリースともに早めに設定して音量が大きく飛び出した部分だけを叩くようなイメージで調整します。
これで浮いた感じ少し軽減したかと思います。
次にディエッサーで耳に刺さりそうな歯擦音を叩きます。使用したのはProtools標準のものです。ディエッサーはなんだかんだでこれが一番使いやすいのです。
※原音→bx_consol SSL 4000E→FET Compressor→De-Esser
そして、この段階でリバーブとディレイを使ってボーカルに隠し味を仕込みます。ちなみに、空間系のエフェクトを使用していますが、私としてはこの処理は空間処理とは思っていません。
まずモノラルでセンドトラック立ち上げ、Avidの「Reveb One」というリバーブをインサートします。このリバーブはアーリーリフレクションと残響部分を個別に処理できるタイプなのですが、ここで使用するのはアーリーリフレクションだけです。
なので、まず残響部分の音量を切ります。
そして、アーリーリフレクションの種類の中でこの曲に合うものを選びます。ここでは「Arena」を選択しました。その後「Spread」と「Delay」のつまみを良い感じでなるよう調整します。
次にセンドトラック後段にディレイをインサート。ここではNIの「Replika」を使いました。
このディレイの設定に関してはぶっちゃけ感覚です(笑)ディレイタイムやフィードバック等の値をなんか良い感じになるよう試行錯誤して決めます。
これらの処理を行ってセンドトラックのレベルを調整したら、下のような感じに仕上がります。
現状だとよくわからないかもしれませんが、ギターなどの上もの楽器が入ってくるとこの処理がかなり効いてきます。しかも、その度合いをフェーダーのオートメーションで自在にコントロールすることもできるので、曲の展開に応じて適宜調整することも簡単です。
ポイントはモノラルトラックにしている点で、変に音が広がったり滲んだりすることを最小限に留めることができます。
スネア
センター定位トラックの最後はスネアです。
スネアはトップとボトムの2トラックで構成させています。これもキックやベースと同じくバスであらかじめまとめておきます。
●Snare_Bot
スネアの2トラックをじっくり聴いてみたところ、どちらかというとボトム側の音のほうがイメージに近い音をしていたので、そちらを主軸にして音を作っていきます。
まずボトムトラックはキックの被りが少々気になりました。BFDの設定であらかじめ消しておくこともできたわけですが、リアリティを求めるなら完全に消してしまうのではなく、あくまでレコーディングで被りが入ってしまったものとして対処したほうが良かったりします。実際にレコーディングしたドラムは、各マイク被りまくってますからね。(そのぶん面倒な処理が増えてしまううえに難しくなるのですが…)
ということで、少しでもキックの音を省くためにハイパスフィルターで低音域をカットします。また、EQ部でも低音域をシェルビングでカットして、2重でキックを抑えます。
そして、スネアのボトムにおいて最も重要であるスナッピーの音を強調するため、8KHzあたりから上をシェルビングでブースト。同時に少々音が遠いように感じたので叩いた瞬間に聴こえる、皮鳴り部分を2kHzあたりを突くことで強調しました。
※原音→ハイパスフィルター→EQ
●Snare_Top
トップ側は先ほど処理したボトムの音に、皮鳴り、胴鳴り感を付加して太さを足すために使います。
なのでこちらの処理はかなりあっさりで、皮鳴り部分と胴鳴り部分を広めのQで軽くブーストしただけです。
※原音→EQ
そして、トップとボトム合わせるとこのような感じになります。
●Snare_Bus
現状ではまだボトムとトップが上手く混ざっていないように感じるので、一体感を出すと同時に定位を少し奥に引っ込めるためコンプを使います。
使うのはメインボーカルでも使用した「FET Compressor」です。
スティックがヒットした時の皮鳴りにコンプが引っ掛かる感じでアタックタイムを決め、リリースはリダクションの針がテンポに対して気持ちよく振れる位置に設定します。
すると次はキックのときと同様、サステインの長さが気になってきたのでエキスパンダーで調整しました。
単体ではこれで良い感じになのですが、ボーカルと同時に聴くとどうもぶつかっているように感じます。なので、ボーカルよりも多少重心を下げる方向にシフトして棲み分けるよう処理しました。
使ったのはSoftubeの「Tube-Tech Equalizers mk2」です。これはPaltec系のEQで、少々特殊な挙動をします。特殊なわりにかなり合理的な設計をしたEQだと思っているので、これまたお気に入りのプラグインだったりします。
※原音→FET Compressor→エキスパンダー→Tube-Tech Equalizers mk2
続いて、スネアにリバーブを掛けます。このリバーブは空間というよりもスネア音色の一部としてとらえて使用します。問題点の洗い出しの際に「スネアにもっと伸びが欲しい」と上げていましたが、これがその処理になります。
こちらはボーカルとは違い、普通にステレオでセンドを立ち上げます。
使用するリバーブはSoftube「TSAR-1 Reverb」です。(我ながらSoftube製品多用しすぎですね)このリバーブはかなりザラついた質感で、悪く言うと結構汚い音質です(笑)ですが、それゆえにスネア含めドラムトラックに使用するとなかなか荒々しい感じの質感を作ることができます。
設定としては少しアーリーリフレクションが多めになるようにし、プリディレイやリバーズタイムを適宜調整しました。
これだけでもなかなか良い感じなのですが、もう一押しロックでパワフルな感じにしたかったので、後段にDistorsionをインサートして音を汚しました。
このProTools標準のDistorsionはステレオ素材に対しては、右上の「STEREO」をオンにすると左右別々に処理されるようになります。ようは音が良い感じで左右に広がるので、ここではオンにしてみました。そして、ミックスレベルでちょうど良いポイントを探って終了です。
※リバーブ無し→+TSAR-1 Reverb→+Distorsion
まとめ
かなりの文量になっているので、このあたりで一度区切ります。
とりあえず、今回処理したトラックすべてを混ぜた状態で処理前後を比較してみましょう。
●処理前
●処理後
各トラック単体の変化を聴いただけだと微々たる差しかありませんでしたが、塵も積もればこれくらいの変化が生まれるてくるわけですね。
個人的にミックスの処理にあたって重要なのは、音量が大きくなって「なんかいい感じ」と思ってしまうあの錯覚に惑わされないようにすることだと思っています。
例えば、EQでどこかしらの帯域をブーストすれば必ず音量が上がります。音量が上がれば大体の人が「良い音になった」と錯覚するものです。つまり、音量が極端に変化した場合、本当に良い方向に働いている処理であるかどうかわからなくなります。
なので、EQやコンプで処理した後は必ず聴感上の音量を処理前後で揃えて聴き比べることが重要です。そのためにほとんどのプラグインにアウトプットゲインが付いてるのだと思います。
さて、次回は他のトラックをミックスしていきますよ。