第12回目です。今回は前回に引き続きミックスの続きをやっていきます。
今回もかなりの文章とサンプル量になっているので、時間のあるときにでもご覧くださいな。
これまでの記事はこちらから↓
進捗状況
作曲下準備作曲編曲レコーディング(Gtのみ)作詞ボカロ調声- ミックス←(いまここ)
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- ニコ動へ投稿
前回でセンターに定位するトラック(Vo、Ba、Kick、Snare)を処理しました。その音源がこちらになります。
今回でドラムトラック全てを仕上げ、ギターやピアノなども処理してミックス完成を目指します。
ここまでのトラックが上手く処理できていれば、これ以降のトラックで破綻することは少ないのでしょう。
その他のドラムトラック処理
前回と同じくサビを中心に聴きながら、まだ手を付けれていないドラムトラックを処理していきます。
タム
まずはタムから手を付けます。
この曲で使っわれているタムの数は3つ(ハイタム、ロータム、フロア)です。バスにまとめて一気に調整するパターンもあるのですが、今回はそれぞれ個別に音を作っていきます。
●ハイタム
まずはハイタムから。
元の状態だとあまりにも音が軽すぎる印象なので、EQを使ってもっとタムらしい響きになるよう調整します。
800Hzあたりの「ぺチッ」とした中音域を狭めのQでカットし、アタック感を補うためにシェルビングで5kHz以上をブーストしました。
これでかなり引き締まった音になりました。
次はコンプを使います。使用するのは前回のベースバストラックにも使用した「Tube-Tech CL1B mk2」です。
これを使用する目的としては、アタック感の強調とコンプ感の付加です。このコンプはかなりアタックを掴みやすいのでトランジェントをいじるのにも役立ちます。
●ロータム
続いてロータムですが、意識していることはハイタムとまったく同じです。
ただ、当たり前ですが素材が違うのでブーストカットする周波数ポイントの数やQ幅、コンプのレシオやアタック、リリースタイムなどは適宜変更してロータムにとってベストなポイントを突いています。
●フロアタム
フロアも上記2つとほぼ同じような感じです。
唯一、意識として違うのはハイパスフィルターを入れいているところでしょう。
これはキックとの差別化です。やはりドラムの最低音域はキックに担当してもらいたいので。
・処理前
・処理後
パン関しては、ハイ=R40、ロー=L20、フロア=L40に振っています。
さて、音としてはなかなか良い感じになったかなと思いますが、まだ少々地味な感じです。
タムはフィルインで登場することがほとんどで、それはつまり曲における展開のきっかけだったりドラムの見せ場だったりするわけです。それがあまりにも地味だとあまり効果を発揮できません。
なので、もう少し迫力をプラスするためにセンドを立ち上げ、リバーブを掛けます。
使用したのはAvid「Reverb One」。
ここではイメージに近い良さげな音をプリセットから探し、最終的に「Midium Stage」というプリセットを採用しました。
イメージに近いものとはいえ、プリセットから選んだだけだと微妙に合わないので「リバーブタイム」「ルームサイズ」そして「プリディレイ」などを適宜調整してイメージに合わせていきます。
特に「プリディレイ」は早すぎると音像が奥に引っ込んでしまうし、遅すぎるとドライの音と空間が分離しすぎてしまうので、少しシビアに確認しておきます。
これでなかなか迫力が出てきた感じですが、リバーブ音がなんとも「いかにも」な感じで目立ち過ぎてる気がします。特に低音域の響き方がどうにも怪しいので、それをEQを使ってカットしておきます。
オーバーヘッド
続いてはオーバーヘッドです。
オーバーヘッドは、シンバル系に焦点を当てたり、スネアに焦点をあてたり、どれというよりドラム全体を捉えるイメージで使ったりと人によって様々かと思います。
私の場合は主にシンバル系に焦点を当てて扱います。おまけ程度にドラムの空気感も意識しますが、それに関しては他のアンビマイクやリバーブもあるので、ほとんど意識しません。
具体的な処理としては、まずハイパスフィルターでキックの音像を極力遠くにします。こうしないと、キック単体のトラックと合わせたときにバフつく原因になったりします。そういった音を狙うなら良いですが、今回の場合キックはそれなりにタイトな質感にしかったのでこのように処理しました。
そして、シェルビングで7kHz以上を軽くカットしました。これはシンバル音の角を丸くする目的と、音像を少し奥に引っ込める目的の2つを兼ねています。
シンバル系の音は、ドラムの距離感に結構影響してきます。シンバルが刺さるような音だとドラムを近くに感じますし、反対だと遠くに感じます。
こういった曲の場合、あまりドラムを近くにしてもあまり良いことにはならないと思うので、ちょうど良いところを狙って奥に追いやるようにします。
次に、Softube「FET Compressor」でシンバルのアタックを潰すと同時に、サステインを伸ばすようなイメージでコンプします。
1176系のFETコンプは掛かりが非常に速いので、シンバル等のアタックが速い素材に対して使いやすいです。
※原音→ハイパスフィルター→EQ→FET Compressor
ハイハット
ハイハットは、まず原音のままだと弱々しい感じがしたので、600Hzと3kHzあたりを中心に広めのQでブーストして荒々しい感じがでるようにしました。
たまに強烈にハイハットにハイパスを入れているのを見かけたりしますが、個人的にハイハットの低音成分って結構重要だと思っています。
そして、ハイハットの強弱のニュアンスをより引き出すためにコンプを使います。
使ったのはまたしても「FET Compressor」です。
アタックタイムをスティックがハイハットに当たったときの「カツン」とした音に引っ掛けるイメージで設定し、リリースタイムはハイハットのアクセント部分でリダクションするような感じなるよう設定しました。
パンはR30に設定しています。
※原音→EQ→FET Compressor
ルーム
続いて「Room」「AMB」の処理に入っていくのですが、この段階で「AMB」トラックは必要ないと判断しました。これまでの処理でそれくらい仕上がってきたと思うので、変にトラックを足しても邪魔になるだけです。
ということで、ドラムの最後1つとなったトラックであるルームマイクを処理していきます。
このトラックに求めるのは荒々しい空気感です。それをプラスしてドラムをよりロックな質感にしていきます。
まずオーバーヘッドのときと同じく、キックをタイトにするためにハイパスフィルターで低音域を大きくカットしました。そして、ほんの少し空気感を足すためにシェルビングで16KHz以上を少しだけブーストしました。
次にシンバル類の音が近すぎる感じがしたので、少々変わった処理ですがマルチバンドコンプを使って、特定の周波数域を”音量”で操作しました。
使ったのはWavesの「C4」で、まぁよくあるマルチバンドコンプです。
下の画像で設定をよく見てもらえればわかるかと思いますが、スレッショルドを全バンド「0」に設定しているので、いわゆるコンプとしての役割をしていません。まして、「Low」「Mid」に関してはバイパスしています。
では何をしているかというと、5kHzあたりから上の帯域の”ゲイン(音量)”を下げています。
「それEQでカットするのと同じじゃないの?」と思うかもしれませんが違うのです。確かにEQのように使っていますが、効き方がEQのそれとは明らかに違います。
言葉では説明しづらいですが、EQは特定の周波数域を「ブースト・カット(強調・減衰)」させるイメージであるのに対し、マルチバンドコンプをEQ的に使うと特定域の「音量を上下させる」イメージになります(さて、これで伝わるかどうか…?)
兎にも角にも、EQとはちょっと違った処理をしたということです。前段のEQでハイをブーストしてるのに、後段で同じような帯域を下げるとか俯瞰すると矛盾してるような処理ですが、前段EQでシンバル類を遠ざけるようハイをカットしてもこの質感にはならないので、やっぱり違うのですよ。
とりあえず「マルチバンドコンプにはこういった使い方もあるんだ」ということだけ覚えておけば何か役立つかもしれないですし、役立たないかもしれません。
少々脱線しましたが、最後にKOMPLETE Ultimeteに入っているSoftube製コンプ「VC76」をインサートします。レシオ全押しモードにして、細かいことは気にせずそれはもう思いきり潰します。
ハッキリ言って前段のEQやマルチバンドコンプより、このコンプの処理のほうがこのトラックにおいては重要です。
ちなみに、これまでに何度も登場してきた「FET Compressor」と、この「VC76」。どちらも同じ1176系統のコンプなわけですが、なぜ今回はこちらを使っているかというと「VC76」のほうが良くも悪くも音が汚いからです。
そして最後にPANを狭めて、空間が奥に対して広がるようなイメージに調整しました。左右にはギターやピアノなどが入ってくる予定になっていますので、そういった楽器のためにもできるだけ左右は空けておこうという考えもあります。
具体的な数値としてはLRともに30です。
※原音→bx_consol SSL 4000E→C4→VC76
ドラムバス
ドラムの仕上げに、これまで処理した全ドラムトラックを一つのバスにまとめます。
スネア、タムに使用したセンドリバーブも一緒にしてしまいます。
そして、ドラム全体にまとまりを出すためコンプをインサートします。こういった用途の場合、バスコンプ系が使いやすいでしょう。
ここで使用したのは、NIの「Solid Bus Comp」です。
ドラムバスにコンプを掛けてまとまりを出すときは、低めのレシオにして主にキックだけに反応するようなアタックタイムに設定すると良い感じになります。リリースタイムは曲調やドラムのスピード感に合わせてちょうど良いポイントを探ります。
そして最後に、ほんの少しサチュレーションさせる目的でSoftubeの「Tape」という、その名の通りテープシミュレーターを使いました。これは正直、あってもなくてもいい蛇足的な処理かもしれませんが、あるほうが個人的に好きな感じになるので採用しています。
これを通すことで良い感じに角の取れた音になるうえ、低音もなんか良い感じになるんですよね。
※原音→Solid Bus Comp→Tape
これで全ドラムトラックの処理終了です。
ギタートラック処理
次はボーカル、ベース、ドラムに次いで重要そうなポジションにいるギタートラックに手を付けていきます。
イントロのリードやソロなどセクション毎にで独立したトラックもありますが、サビに含まれていないギタートラックに関しては後回しにします。
バッキングLR
まずは左右に振っているバッキングトラックから手を付けます。
LRそれぞれ独立して処理していきますが、行っている処理は大体同じです。
まずEQで1.5kHzあたりを狭めのQでカットします。左右に位置するとはいえ、このあたりはボーカルの邪魔になっているためです。
そして、300~400Hzあたりを軽くブーストしました。このあたりはバッキングギターにとっておいしい帯域なので、図太いギターサウンドが欲しい場合は持ち上げてみると良いかもしれません。(他の楽器との棲み分けに注意が必要ですが…)
唯一、R側のみベルカーブで8kHzの高音域をブーストしています。これは本来ならLR両方ともブーストしたかったところなのですが、L側にはリードギターが入ってくるのでそのために空けておこうと思った次第です。
あと、音を聴けばすぐにわかりますが、既にかなり歪んでいてダイナミクスなんてほとんどありませんからコンプを掛ける必要性は特にないでしょう。
パンの位置は、L=80、R=80です。
※原音→EQ
ここまでの処理だけでもいい感じになったんじゃないかな?と思ったのですが、どうもボーカルと合わせると少し邪魔な感じがしました。
そこでLR2つをステレオバスにまとめて、MS処理でEQすることにしました。ようはボーカルの定位するセンター成分だけをカットするのです。パンを左右に振っているからといって、センター成分がないわけではありませんからね。
使用したのは「bx_digital V3」です。MSでEQするならこれ以上便利なプラグインはないかもしれません。(少なくとも、私の手持ちではMSはこれが一番便利です)
削った帯域は2.5kHあたりと200Hzあたり。200Hzのほうはボーカルより、ベースのために空けている感じですね。
※原音→bx_digital V3
画像ではサイド側に試行錯誤した痕跡が残ってますが、最終的にサイドは全くいじってません。
Lead1
サビで鳴っているギターはこのリードが最後です。
まずはEQで、先ほどL側のバッキングで上げなかった高音域を軽くブーストします。そして、音域的に完全にボーカルの邪魔となっているので、被っている1kHzあたりをカットしてボーカルより奥に引っ込んだ感じを狙って調整します。
せっかくのリードギターなので、もう少し安定して聞こえやすいよう粒を揃えるような感じでコンプを掛けます。ここで使ったコンプは「Summit Audio TLA-100A」でアタック、リリースともに速めにして、-3dbくらいリダクションするように設定しました。
多少張り付いたような音になってしまいましたが、これでより安定して聴こえる感じになったと思います。
それにより、また多少音像が前に出張ってきた感じがするので、また奥へと追いやるためにSoftubeの「Summit Audio EQF-100」というEQを使って2.7kHz帯をカットしました。
このEQはとてもナチュラルでクリアな掛かり方をするので、このようにEQで前後関係を操作したい場合なんかによく使います。
パンはL30に設定しています。
※原音→bx_consol SSL 4000E→TLA-100A→EQF-100
加えて、このリードにはセンドでディレイを掛けていきます。
リードギターやギターソロ等は、とりあえずディレイやリバーブを強めにかけるとなんかそれっぽくなります。(まぁここではそれほど目立つようにはしませんが…)
ここではあまり空間を広げたいくないと思ったので、モノラルでセンドを立ち上げます。(というか、ステレオで試してみたら上手くいかなかった)そして、ドライ音が定位しているのとは反対側のR側にセンドのPANを振ります。こうすることでドライ音とディレイ音が干渉することなく空間を表現できるうえに音場を圧迫しないというメリットもあります。
ここで使ったディレイはNIの「Replika」で、設定はなんかいい感じになるよう適当に決めました。
※ディレイ無→ディレイ有
ピアノトラック処理
ピアノはこれまでに登場した楽器よりも後ろに定位するようなイメージにすべく調整していきました。他のトラックと比べてインサートしたプラグインが多くなっています。
まず音色そのものがどうも柔らかい感じだったので、もっとロックっぽく「パキッ」とした音色になるようEQしました。
そして、さらに「パキッ」とした音色にすると同時に前後関係をコントロールする目的で、これで今回何度目の登場だろうかと思うくらい使っている「FET Compressor」をインサート。「パキッ」感はアタックタイム、前後関係はリリースタイムの値を意識して調整しました。
この2つの処理でかなりイメージに近づいてきましたが、オケに混ざるといまいち抜けてきません。原因としては、前後軸では確かに後ろにはいるが、上下軸としてはどうもバッキングギターと被っているようだからです。まぁ似たような音域を弾いちゃってますからね。
そこでピアノの重心を上げるようEQで対処しました。使ったのは「Summit Audio EQF-100」。56Hz以下をシェルビングでカットし、3.9kHz、8.2kHz帯をかなりブーストしました。
そして、オケの後ろのほうにいるわりにピアノとしては空間が乏しい感じがしたので、リバーブをインサートしました。これはセンドではなくトラックに普通にインサートしています。
使ったのはOverloudの「BREVERB2」で、適当にピアノに合いそうなプリセットを選びリバーブタイムやプリディレイやらを適宜調整しました。
最後にバッキングギターの時と同じく、MS処理でセンターでボーカルと被りそうな部分をカットしました。この処理は別になくてもよかったかもしれませんが、まぁ念のために。
↓
※原音→EQ→FET Compressor→EQF-100→BREVERB2→bx_digital V3
再度ボーカル調整
コーラスを除いた全楽器隊が以上で出揃ったので、再度ボーカルに注目して現状のミックスを確認してみます。
ボカロを使っていようがこれは歌ものです。なので歌がきれいに聴こえることこそがこのミクスにおける最重要事項なのでもう一度確認し直しても罰は当たらないでしょう。
どうでしょうか?
「ボーカルが聴こえない」なんてことはないですが、上ものが入ってきて少し埋もれ気味な感じがします。「これでちょうど良い」と思う方もいるかもしれませんが、私としては「あと一歩前に」と思いました。
フェーダーを上げてみてもオケから浮くような感じになるだけだったので、追加でEQを一つインサートしました。
ここで使ったのはSlatedigitalの「VMR FG-N」です。NaveのモデリングEQですね。
このEQを選んだ最大の理由としては、下にある「DRIVE」機能を利用したかったからです。これはマイクプリに過剰入力した際に生じる歪みを、音量を変化させずに付加させることができるというものです。歪みといってもディストーションやオーバードライブみたいな歪み方をするわけではないので、今回のような「もう少し」という場面でよく引っ張りだしてくるのです。
といっても、これだけで解決はしなかったので2.5kHzと700Hzあたりを少しブースト。そして、音像がよりクリアになる感じがしたので、ハイパスフィルターを30Hzくらいで入れました。
※FG-N処理無し→FG-N処理後
続いて、ボーカルに空間を付けます。前回ディレイによる小技を加えましたが、それでもドライすぎて少しオケから浮いている感じがするのでそのたりの調整です。
センドトラックを立ち上げて「Replika」と「BREVERB2」の順番でインサート。
BREVERB2側は適当に合いそうなプリセットを選んで微調整し、Replikaはリバーブのプリディレイ的な感覚で調整し、ちょうど良いポイントを探します。このディレイ+リバーブの組み合わせにして空間を作ると、音像が滲みにくくなるような気がしているので、ボーカルのようなオケの最前線にいるトラックにこの手法をよく使います。
※原音→Replika+BREVERB2
コーラストラック処理
このコーラスを処理し終えたら、サビに登場する全トラックの処理が終了です。
前回ミックス下準備時にダブルにしたので2トラック存在しますが、いきなりバスにまとめて2トラック一気に処理していきます。
まずはaccusonusの「ERA Voice Leveler」というプラグインをインサートしました。
これは声素材の音量を自動で均一化してくれるやつです。有名なやつだとWavesの「Vocal Rider」が類似製品になるかと思います。
前回の下準備時にメインボーカルにオートメーションを書く作業をしましたが、その作業を省く目的で使っています。
まぁ、そうすると「なんでメインボーカルには使わなかった?」という疑問が出てくるかと思いますが、重要なトラックはやっぱり手作業で細かく調整したほうが仕上がりが良かったりするんです。
自動でやってくれる系のプラグインは大変便利ですが、やっぱり粗かったりします。よく耳につく重要なトラックだとなおのこと、その粗さが分かりやすいので面倒でも丹精込めて手作業するようにしています。
そうすると「コーラスは重要ではないのか?」という声が聞こえてきそうですが、少なくともメインボーカルやベース、ドラムなどよりは全然重要じゃないと思います。無くても曲として成立しますから。
さて、話が脱線しましたが、次はコンプで前後感を作ります。もうお馴染みの「FET Compressor」です。メインボーカルの一歩後ろに位置するようなイメージになるよう調整します。
次にProtoolsに標準で付いている「AIR Vintage Filter」をハイパスモードで使います。ようは思いっきりローを削ります。ここでは500Hzあたりまで削りました。これくらい過激にローを削って少し機械的な音にしておけば、多少音量を大きく出してもメインボーカルより目立つことは少なくなります。
最後にProtools標準の「AIR Chorus」で少しステレオ感を足すと同時に定位感を薄くしました。
●処理前
●処理後
その他のトラック処理
ここまででサビに登場するトラックの処理は全て終わりました。
しかし、他で部分的に登場するトラックが残っていますので、次はそれに手を付けていきます。
ギターソロ
他の部分でもやはり重要なトラックから手を付けていきます。ギタリストの私からしたらギターソロはやはり大事です。
まずはハイパスフィルターでローをカットし、重心を少し上げます。そして、6kHzあたりをベルカーブでほんの少しブーストします。これでかなり抜けが良くなりました。
次に「FET Compressor」で前面に張り付くような感じにします。ギターソロはメインボーカルとほぼ同じくらい、あるいはそれよりほんの少し引いたくらいがちょうど良いと思います。
そしてパンに関してですが、こういったギターソロトラックはセンターに定位させて問題ないと思うのですが、個人的にギターはセンターで鳴っているとイマイチかっこよく聞こえないと思うのです。
なので、ほぼセンターではありますがほんの少し左より(L3)へ振っています。
※原音→bx_consol SSL 4000E→FET Compressor
続いてセンドトラックを立ち上げ良い感じに空間を付けます。
ソロもボーカルと同じくディレイとリバーブの合わせ技を使います。使用プラグインも全く一緒で、プリセットを違うものにしてボーカルと差別化しています。
ボーカルの時はこれで良い感じにハマったのですが、ソロでは少し物足りない感じがしました。なので、前回スネアのリバーブに使ったステレオソースに対するディストーションテクを試してみました。
これでなかなか派手になりましたが、同時にリバーブの低音も持ち上がって少々重たい感じになってしまいました。
なので、その不要な部分をEQフィルターでカットします。
※リバーブ無し→リバーブあり
ギターLead2
続いてはイントロとアウトロに登場するリードギタートラックです。
このトラックへのアプローチは基本的にソロと同じです。ただハイの質感を少し変えることと、コンプではソロよりも少し後ろに引いたくらいの位置になるよう意識しています。
そして、リバーブはソロで使用したセンドトラックの使いまわしです。
また、このトラックに関してはソロよりもさらに左よりのパン(L10)設定にしました。
※原音→bx_consol SSL 4000E→FET Compressor→リバーブ
ギターOct1
これはBメロで登場するギターのオクターブ奏法トラックです。
このトラックは、そのままだとバッキングギターとほぼ一体化してしまってるので、バッキングよりも重心を高くすることで棲み分ける方向にしました。
まずは音の重心を上げるためにハイパスフィルターを入れます。
そして、ボーカルと当たりそうな帯域である2kHzあたりをカット。これは同時に音を少し後ろに下げる目的もあります。そうすると少し抜けが悪くなった感じがしたので。5kHzあたりをブーストして抜けを補います。また、オクターブ奏法の低音側にもう少し太さが欲しいと思ったので、400Hzあたりを気持ち程度ブーストしました。
このトラックのパンはR40です。
※原音→ハイパスフィルター→EQ
続いて、隠し味程度にディレイを使って空間を付けます。
ここではモノラルでセンドを立ち上げ、Replikaをインサートしました。
ディレイの設定はわりと適当ですが、ポイントはモノラルである点とドライの音とは反対にパンを振っている点です。
ドライの音がR40に振っているのに対し、ディレイ音はL70にしています。こうすることで空間を表現しつつ、オケの左右の偏りを少しだけ緩和することが出来たりします。
※ディレイ無し→ディレイあり
ギターOct2
ついに最後のトラックです。
このトラックは1番と2番の間にある間奏部分で弾いているオクターブ奏法トラックです。
先に処理したトラックと役割も奏法も同じなので、ほとんど同じアプローチで処理してしまいました。ほんの少しEQポイントをずらしたりしただけですね。
ディレイの上記のトラックで使ったセンドをそのまま使いまわしました。
※原音→bx_consol SSL 4000E→ディレイ
オートメーション書き込み
全トラックの処理が完了したら、曲全体の流れを意識してオートメーションを書きます。
「ここは盛り上げるためにボーカルを少し出そう」とか「ここは落としたいからギターを下げよう」といった感じで、気になったところを調整していきます。
特に意識してオートメーションを書いたのは、ボーカルに用意した2つの空間系センドトラックです。サビのセンド量のままでイントロなど、音数が少ないところを再生してしまうとびっくりするくらいリバーブが目立ちます。
そういった問題を解決するにはオートメーションを書くのがもっともベターかと思います。
マスター処理
これで全ての処理が完了したので、その成果を聴いてみましょう。
これでミックスに関しては完成!で良かったりするのですが、最後にマスターで全体を微調整してしまいます。
これはどちらかというとマスタリングの範疇になってしまうのかもしれませんが、あまり気にしないでください。
まずbx_digital V3をインサートして、MidとSideそれぞれを均すような感じでEQします。特にMidのローは曲調に対して少々出すぎな感じがしたので、少し多めにカットしました。
そして、最後にトータルコンプとしてPluginAllianceの「bx_townhouse bus compressor」をインサートします。キックに対してコンプが反応するようにし、リリースをautoにして軽くリダクションされるようにすれば良い感じにオケが引き締まります。
※原音→bx_digital V3→bx_townhouse bus compressor
まとめ
これにてようやくミックスが完了です。
ミックスそのものより、この記事に貼るための音源や画像作成のほうが過酷でした(笑)そのせいか途中から解説がかなり雑になってますが、そのあたりは察してください。
正直、良いミックスが出来たどうかはよくわかりませんが、精一杯のことはやりきったので個人的には満足な仕上がりです。
次回、マスタリングは1曲をニコ動とYoutubeに投稿する用に作成するだけなので、大した解説はないと思います。というか、マスタリングはミックス以上に謎作業で、私のやっていることなんてせいぜい「素人のなんちゃってマスタリング」でしかないでしょう。本当に解説できるものがありません(笑)
なので、おそらく次回で投稿までいけるのではないかな?と思います。動画の作成も歌詞の字幕入れるくらいしかしないので。
ということで、次回でさっさと投稿を目指します!