ボカロ曲の制作過程全てを解説していく連載第2回目。
前回の記事に続き、今回は下準備で降ってきたメロディの断片を膨らませて、楽曲のサビを制作してきたいと思います。
前回の記事はこちらからどうぞ↓
とあるボカロPがニコ動に作品を投稿するまでの全制作フローを徹底解説(1)
現在の進捗状況
作曲下準備- 作曲 ←現在行っている作業
- 編曲 ←2とほぼ同時進行
- レコーディング(Gtのみ)
- 作詞
- ボカロ調声
- ミックス
- マスタリング
- 投稿用動画制作
- ニコ動へ投稿
今回からは本格的に「2.作曲」の段階に入っていきます。
といっても、実はその次の「3.編曲」も同時に行っていくような流れになります。個人で制作している場合「作曲」と「編曲」の線引きはかなり曖昧になってしまうのです。
一般的には「作曲」はメロディと簡単なコード伴奏を作る作業。「編曲」はそれを元にコードの再構築や楽曲の展開を考えたり、各楽器の具体的な演奏を考えていく作業になります。
私の全制作フローのなかではもっとも時間を要する部分です。
それでは始めていきましょう!
メロディの断片を膨らませる
まず、前回のメロディの断片をおさらいしておきましょう。
MIDI画面ではこのようになっています。
- BPM=162
- Key=Dメジャー(ニ長調)
皆さんの印象では、このメロディは楽曲のどの部分になると思いますか?Aメロでしょうか?それともBメロでしょうか?
人によって印象が変わってくると思いますが、私としては「サビのメロディだな」と思っているので、楽曲のサビとして膨らませていこうと思います。(まぁ、前回からの流れでサビにする気満々だったことはもうお気づきだったでしょうが…)
1.とりあえずリフレイン
ポップスのサビといえば”リフレイン”でしょう。キャッチーなメロディであったなら、適当に繰り返しているだけでサビ感が出てきます。
とりあえずコピペで倍の長さにします。
しかし、それだけだとさすがに味気ないので後半部分にほんの少し遊びを入れてみました。
2.さらに展開してサビ感を出す
このまま「サビ終了→間奏」でも良さげな雰囲気ではあるのですが、せっかくのサビなのでもっと盛り上げたいですね。
なので、新しい展開を作ってもう少し繋いでみました。
まだリズムを打ち込んでいませんが、ここでリズムパターンが変化したのが感じ取れるでしょうか?そういった展開も先に考慮して、メロディを考えてみました。
3.フィニッシュにもう1ひねり
現状の終止感が強いサビ終わりも良いですが、次へと展開していくようなメロディの終わり方のほうが良いんじゃないかと思い、フィニッシュにロングトーンを付け足してみました。
こちらのほうが、フレッシュで力強い感じがしませんか?
サビのメロディはこんなものでしょう。
もし実際のボーカリストに歌ってもらうことを想定したなら、この段階でそのボーカルの音域を考慮してKey変更やメロディの微調整を行うのですが、今回はボーカロイドですのでそのあたりは緩くても問題ないでしょう。どんな無茶な音程でも発音してくれますからね。
次はこれにオケを付けていきたいと思います。
適当にドラムを入れる
現在のクリックのままだと、なかなかバンドサウンドをイメージしづらいで、とりあえずドラムを入れていきます。はじめから細かく作りこむのではなく、まずはクリックの変わりにすることを目標に作っていきます。
ちなみに使用音源はBFD3です。
1.4小節ぶんの8ビートを打ち込む
難しいことは考えず、とにかく8ビートを打ち込みます。
私は鍵盤でリアルタイム入力派の人間なので、4小節の指ドラムに命をかけて打ち込みます(笑)リアルタイム入力のコツはミスっても気にせず演奏することです。所詮はMIDIなので、後からいくらでも手動で修正できますからね。さらに言うと、修正を前提とした入力を心がけたほうが精神衛生上よろしいかと思います。
ちなみにリアルタイムで4小節打ち込んだ後、クオンタイズとベロシティの調整をしました。
2.打ち込んだ4小節をコピペ
メロディの尺に合わせて、ひたすらコピペします。適当な位置でクラッシュシンバルを鳴らすなどの微調整はしましたが、それ以外は何もしていません。
メロディと合わせて聴いてみてください。
まだメロディとの関係性がイマイチな部分もありますが、それはメモしておくか頭の片隅にでも留めておきます。ここでドラムを細かく作りこんだとしても、ベースやギターが入ってきたときに「やっぱりこうしたいな」となるのがオチなのでグッと堪えます。(みなさんもそういう経験ありませんか?)
また、細かく作りこんだものは修正が難しいので、はじめはとにかく大まかなカタチを作ることに専念します。
とりあえず、これでクリックが必要なくなるくらいにはなりましたね。また、バンドサウンドのイメージもしやすくなったと思います。
コードを付ける
次は適当なピアノ音源を立ち上げて、コードを付けていきます。(ここでは使い慣れているAIRのMiniGrandを使っています)
前回の記事の準備のときに決めた”楽曲の方向性”に合致するよう、またサビらしくダイナミックに動くコード進行を意識して作っていきます。ここで楽曲の雰囲気がかなり決まってくるので、間違った方向にいってないかも考えながら少し慎重にやっていきます。
また、あくまで響きの確認であり”コードを付けるだけ”の作業なのでピアノとしてのフレーズとかは一切考えません。
ここでは簡単にコードを付け終わったものを聴いていただきましょう。
次の展開が少し浮かんできたので、それも少しだけ打ち込んでみました。
具体的なコード進行はこのようになっています。
MIDI画面はこのような感じになっています。
CC64を全開にして、サステインペダル(ダンパーペダル)を踏みっぱなしの状態にしています。理由は、そのほうが手っ取り早く隙間が埋まって、テンションが上がるからです(笑)
さて、コード進行については所謂「王道進行」というものに少し捻りを加えたものになっています。
まずはじめに「開始はサブドミナントがベストだな~」と思ったので、この曲のKey=Dメジャーにおけるサブドミナント「G」を1小節目におきました。そこからサビらしさということを考慮していたら、自然と王道進行の流れになっていました。
あとは“sus4″コードを多用して、若くて浮き足立っている感じ、地に足がついていない感じを表現してみたつもりです。
また最後の4小節だけは王道進行から外れて、サビのフィニッシュにかけてベースラインが上昇し続けるコード進行にしてみました。前半のほうは上下を繰り返すようなベースラインになっていたので、ここで仕掛けをうってサビのラストをさらに印象的にしよう、という狙いがあったりします。
出来上がってしまえば何てこと無いですが、何度か試行錯誤したうえでたどり着いたコード進行になります。
コードもこれでいい感じになったかなと思うので、次に進んでいこうと思います。
コードに合わせてベースをギターを入れる
コードがある程度決まったので、それに沿ってベースとギターを入れていきます。これが終わるとサウンドの全体像が出来上がります。
1.ベースを打ち込む
まずはエレキベースを打ち込んでいきます。
使用音源はTrilianで、AmpliTubeのベースアンプと併用して簡単に音作りします。(ここでの音作りはあくまで仮です)
ここでも細かいことは考えず、基本であるルート弾き(8分音符)で埋めていきます。そもそも、高校生でも演奏できることを想定して制作していくので、うねうね動くベースラインである必要がありませんからね。
ドラムと同様、ベースも軽くベロシティ調整をしています。
2.エレキギターを仮録りする
私の場合ギターだけは実際に演奏できるので、これだけはオーディオで仮録音してきます。
今回は完成イメージが浮かびやすいよう、LRの2トラックぶん録音していきます。
また、仮録りが終わったらコード付けに使用したピアノはミュートしてしまいます。あくまでこれはコードの響きの確認用なので。
音作りはJKバンドっぽく、軽めのオーバードライブサウンドにしてみました。
多少ミスってますが、いまは雰囲気さえ出来上がればいいので気にせず進めます。
とはいえ、かなり曲っぽく仕上がってきたかと思います。
ここまで出来上がると「ここでドラムのフィルが欲しいな」とか「ここでキメを入れたいな」といった具体的なイメージが連鎖的に浮かんできませんか?今回の作業はその状態を作り上げるためにやってきたものだったりします。
あとはそれに沿って作り込んでいけばサビはほぼ完成です。
今回のまとめ
今回はサビの全体像をカタチにしてきました。
大事なのは、細かい部分は置いといてとにかく大まかに作っていくことだと思います。はじめから細かい部分に注意を向けても、なかなか良いアイデアは出てきませんし、後の修正が難しくなります。
また、今回はメロディ→ドラム→コード→ベース→ギターと進めきましたが、この順序は決まっているわけではなく、曲によって変わってきたりします。
今回は一番はじめにメロディが降ってきましたが、そもそもカッコいいリズムが先に降ってくる場合もありますし、良い感じのコード進行が先に出てくる場合もあるので、その時点で順序は変わってきますよね?
基本的に「思いついたところから」というのが、私のやり方です。
次回はこのサビをさらに作り込んでいきたいと思います。