ボカロ曲の制作過程全てを解説していく連載、第6回目。
またしても前回から間が空いてしまいました。
今回こそはAメロとBメロを作り、ワンコーラス出来上がった状態へと進めていきます。
これまでの記事はこちらから↓
Aメロ制作
前回制作した、このイントロ~間奏1から続くようなイメージでAメロを作っていきます。
まずコード進行を決める
一度没にしたくらいですから、Aメロのイメージが全く浮かんでいないことはお気づきかと思います(笑)
なので、まずコード進行を決めて一石投じていきたいと思います。何か1つが決まると芋づる式でいろいろとアイデアが出てくるものですからね。
例のごとく、コード確認用のピアノを使って打ち込みます。
少し捻ってみたのは真ん中の「Asus4→A」くらいで、他はほとんど適当です。(笑)
正直、この状態ではまだ良し悪しを判断できないので、このコードで進めることを想定して次に進んでいきます。
コードに合わせてメロディを
先ほどのコード進行に合わせて、歌いながらメロディを作っていきます。
部分的にでも良いメロディが出てくるまで試行錯誤し、引っ掛かりを見つけたらそれを軸にメロディを展開していきます。
なんとか良い感じのメロディが引っ張り出せたような気がします。
これと同時に、ある程度のリズム展開やブレイクなどのイメージが頭の中で固まってきたので、それらをこれから作っていきたいと思います。
ドラムを打ち込み
まずはドラムから作っていきます。
先ほど言ったイメージを具現化するようにして打ち込みます。
・Aメロ前半
・Aメロ後半
前半はスネアを鳴らさず、キックの4つ打ちと16分で細かく刻んだハイハットのみで、スピード感を維持しつつも少し落ち着いた雰囲気になるよう意識しました。
ブレイクを挟んで後半からはスタンダードな8ビートになりますが、スネアはこれまでと違い「オープンショット」で叩いています。逆に、これまで作ってきたサビや間奏では「リムショット」で叩いていました。
これは、サビ等の盛り上がる部分とそれ以外とでメリハリをつけるためにやっています。
実際のドラマーがどういった意識でオープンショットとリムショットを使い分けているのかはわかりませんが、私の場合はこういったことを意識してスネアを打ち込むことが多いです。
ベース打ち込み
続いてベースに手をつけます。
ここでもベースは”シンプル”にいきます。また、この段階で少しコードの変更や付け足しを行いました。
コードの変更があったのはAメロの終わり部分。
元の状態だと、この部分はベースラインが頻繁に上下するのですが、どうもそれが気に食わなかったので、滑らかに順次進行するように直しました。コード変更にあたって、メロディの乗り方が少し変わるかな?と思ったのですが、特に気にならなかったのでそのままにしています。
そして、付け足したのが最後の「F#7」。(音源では7th音が鳴ってませんが…)
これは「次にBメロへと展開しますよ」的な合図として入れました。これがあるのと無いのとでは結構メリハリが変わってきます。
打ち込み的な部分で言うと、冒頭を「スライドイン(低い音程からスライドして、目的の音程を鳴らす奏法)」にしています。Trilianを使用している方はご存知かと思いますが、この音源はベロシティをMAXにすると勝手にこの奏法に切り替わります。
これを使って実際に弾いてる感を出してるつもりになっています(笑)
アルペジオ主体でピアノ打ち込み
次はピアノに手をつけます。
サビでは結構地味になっているぶん、Aメロでは頑張って少し目立つようなアレンジにしていきます。
ここではコードアルペジオを主体にしてみました。
この後に加えるギターをブリッジミュートのパワーコードで刻むつもりでいるので、それと対比するように単音でのアプローチをとってみた、という感じです。
「和音←→単音」「長音←→短音」といったように、逆のアプローチでアレンジしていくと各楽器の分離が良くなります。ここではそれを狙っています。
ちなみに、似たような方向性でアプローチをすると各楽器の一体感やまとまりに繋がる傾向があります。その場合、やりすぎると「沢山楽器が鳴ってるのに全然広がって聴こえない」。最悪の場合「このトラックいらねーんじゃね?」という事態になるので、各楽器の役割を意識することはとても重要です。(このあたりは私もまだまだ勉強中の身なのですが…)
自分で作っておいてなんですが、ピアノが入った途端なんとなくギャルゲーのテーマ曲っぽい感じのAメロになってきましたね(笑)
ギターを入れる
次はギターを入れてAメロは完成です。
先ほども言った通り、ギターはブリッジミュートのパワーコードで攻めます。
Aメロのギターは前半はお休み、後半から登場というようにしました。Aメロでのこういうアプローチは定番ですね。
歪ませたギターは存在してるだけでオケが勢いづくので、楽曲の起伏を作るのにとても有効です。
Bメロ制作
先のAメロから続くようにBメロの制作にかかります。
Bメロを作るうえでの最大のポイントは「いかに劇的にサビへ繋げられるか」だと思っています。Aメロから適当に繋いだだけだと、せっかくのサビが印象的になりません。
Bメロ=サビのお膳立て的なセクション、ということを念頭において作っていきたいと思います。
まずはメロディ
ここではまずメロディから考えていきます。
Bメロではかなりダイナミックで元気のある感じのメロディラインになるよう意識して作っていきます。
このような感じでどうでしょうかね?
冒頭の大きな音程跳躍でダイナミックさを出してみました。
Aメロが出来上がった段階で大体のコード進行やリズムは頭の中で出来上がっていたので、それらを踏まえたうえでのメロディという感じです。
ドラム打ち込み
次はドラムを形にしていきます。
冒頭の「ダダダッ」の決めはポップスではよくあるやつですね。
中間あたりは他の楽器との兼ね合いも含めて考えたいと思うので、現段階ではかなり甘めにしてあります。
対照的にラストのフィルインがかなり作りこまれているのは「こういう決めでサビに繋ぎたいなぁ」という明確なイメージがあったからです。
中間部分は再度手を付けると想定して、次へと進んでいきます。
ベース打ち込み
次はベースを入れてリズムをさらに強固にしていこうと思います。
これまでは仮でコードを打ち込むことを頻繁にやっていましたが、ここでは必要ないかな?というくらいに頭の中で進行は固まっていたので、ぶっつけで進めていきます。
ここでは大きめな動きをつけてリズミカルになるよう意識しました。かなり躍動感で出てきたのではないかと思います。
またシンコペーションを増やすなどしたので、同時にドラムも少し調整しています。
ピアノ打ち込み
続いてはピアノです。
ここではちょっとしたオブリを入れつつ、ダイナミックな伴奏になるよう意識してみました。
ギターを入れる
最後にギターです。
特に難しいことはせず、これまで作ってきたオケに合わせて弾いたという感じです。後々、細かいオブリを入れるかもしれませんが、これくらいシンプルでも良いのではないでしょうかね?
また、地味に先ほど甘めに作っていた中間あたりのドラムも練り直しています。最終的には下のようになりました。
具体的には、ライドシンバルで刻むようにしたという感じですね。
まとめ
今回でやっとAメロ、Bメロが出来上がったことで、ワンコーラス出来上がった状態になりました。
その成果を聴いてみましょう。
ちゃんと曲になりましたね!(逆になってないと困るわけですが…)
AメロやBメロのような、1曲の起伏の中で谷となるセクションは比較的作りにくい傾向にあると思います。少なくとも、私はサビなどの盛り上がるセクションのほうが作りやすいタイプなので、このあたりの作業は手探りでやることが多いです。
なにはともあれ、ワンコーラスできればアレンジの半分以上は終わったも同然です。
次回はこれをフルコーラスにしていきますよ。